鳥居服装学院【8月号/B系編】”みゆき学長は服飾界のサラブレッド…?”

HR B系の「B」はブレイクダンスの「B」

「Y2K」(Year2000の略)という昨今のトレンドキーワードに見られるように、現代のさまざまなファッションシーンのなかに90~00年代のファッションの要素が散りばめられている。

とはいえ、90’sは日本ファッション繚乱の時代。
古着、グランジ、ハマダー、アムラー、シノラー、サイバー、B系、V系、ロリータ、ゴシック――と数えきれないほどのトレンドが生まれ、消えたり消えなかったりした時代である。

90年代の魅力とは何なのか?
そもそもファッションにおける90年代って、本当はどういう時代だったのか?

――そんな疑問を出発点に、ファッションメディアでもない「ケムール」が”90’sファッションを総括しよう!”と意気込み、「#たばこのことば」に登場してくれた鳥居みゆきさんにさらなる無茶を言って創立した本校。

それが「鳥居服装学院」、略して「TFC(トリイ・ファッション・カレッジ)」である!!

さて、今月のテーマは「B系」

B系とは、もともとブレイクダンサーたちを「B BOY」「B GIRL」と呼んだことに根拠を持ち、その後、スケーターやHIP HOP、ラッパーなど幅広いカルチャーでみられるダボっとしたTシャツやバスケなどのスポーツウェアを着こなすイメージが定着していったスタイルのこと。

たとえばほら、90年代を描いた青春映画と言えば、かの傑作「mid90s」を思い出す人もいるのではないだろうか。

……とはいえ、スケーターやらHIP HOPやら、多様なジャンルやスタイルが複雑に絡み合っていて、これは正直手に負えない。

鳥居さんも通っていないジャンルだろうし、2回目にして八方塞がり。

……助けて90’s当時を知るプロフェッショナル!!

というわけで担当編集が泣きついたのは、東京都・御徒町駅から歩いてすぐのところにあるこちらのお店。

■SHOP DATA
No.3:upperupper

画像出典:upperupper

ABOUT
2001年、上野のインポートセレクトショップで古着バイヤーをしていたUGと、馬喰町の古着卸業者で営業をしていたMuneyが出逢う。オールドスクールスタイルにどハマりしていた二人は、お互いのヒップホップファッションとそのルーツへの敬愛と探究心を認識し意気投合。
2008年、Muneyは移住先、カナダのトロントにおいて、数年に渡る現地古着小売店と卸業者での経験を基にビンテージディーラーとして独立。同年、トロントに移ったUGと合流し、ヒップホップカルチャーをベースにしたファッションプロジェクト「upperupper」を発足。
2013年、上野御徒町にビンテージセレクトショップをオープン。

ADDRESS:東京都台東区上野6-2-5 塚本ビル1F
OPEN:12:00~20:00
TEL:03-5817-8627

Instagram:@uprupr
Official HP:https://upperupper.jp/

店長:UGさん

さあ、どうなる!? 鳥居服装学院…!!

今回も90’sファッションにまつわるトピックが盛りだくさん。
少々長めですが、最後までお付き合いください!!

1限目 革命的スニーカーとハイテク(?)時計

鳥居みゆき(以下「鳥居」) ユージさんは90年代をリアルに経験した世代なんですよね。

UG(以下「ユージ」) そうだね。90年代はちょうど中学・高校だったから、洋服に1番熱中してた時代でもあるかな。1番覚えてるのが、92年。俺は中学2年生でバスケやってたんだけど、その年がちょうどバルセロナ五輪の年だった。スニーカーとかウェアとか、ファッションに絡めたものがいっぱい出たんだよね。

鳥居 そしたらどんどんファッションにはまっていったんですね。スニーカーってことはエアマックス狩りした?

ユージ 狩りはしてない(笑)

鳥居 私、ちゃんとよく知らないんですけど、エアマックス狩りって何なの? 何をそんなに狩るの?

■とりいのーと:エアマックス狩り

画像出典:FASHION SNAP

スポーツ用品メーカーのナイキ製のスニーカー、ナイキ エアマックスを履いた人物を複数の若者が徒党を組んで襲撃、暴行し強奪すること。「ナイキ狩り」「マックス狩り」ともいわれた。
(中略)
また、強盗を意味する「狩り」だけではなく、単なる盗難や偽造品の販売も横行し、偽造品販売は暴力団の資金源ともなっていた。強奪や転売だけでなく、AIR MAXのAIRの部分を鋭利なもので刺し使えなくするという行為もあった。

――引用:Wikipedia

ユージ エアマックスの前からそういう事件ってあったんだけど、「AIR MAX 95」が革命的だったのよ。
バッシュみたいに靴の横にNIKEのマークも入らないし、ネオンカラーのグラデーションで。

鳥居 派手なのが珍しかったんですね。

ユージ もうね、革命だった。出てすぐは売れなかったんだけど、しばらくすると急に人気が出て、10万とか20万のプレミア価格で取引されるようなスニーカーになっちゃった。そうしたら日本じゃ買えなくなったから、みんな買い付けに海外行って。だから俺の周りにも、エアマックスだけで家とか車買ったって人たくさんいる

担当編集(以下「編」) エアマックスで家買えるんですか…すげえ。

ユージ そういう20万のスニーカー履いてる人がいたら金盗むより楽でしょ。言い方おかしいけど(笑)

鳥居 バレませんか(笑)

ユージ まあ殴ってお金とってもバレるから。靴脱がしたほうが、カツアゲの延長線上みたいでお金を盗むよりもハードルが低かったんじゃないかな。そういうのがエアマックス狩り。

 すごい詳しいですけど、本当に狩ってませんよね?(笑)

ユージ 狩ってないって(笑)

 当時95は持ってました?

ユージ 持ってない。買えなかった。

ユージさんが取材のために自宅から持ってきてくれたコレクションの一部。当時買えなかった「AIRMAX 95」は復刻で購入したそう。

鳥居 95以外はそんなに人気なかったんですか?

ユージ そこなのよ、面白いのは。次の年に、NIKEが96っていうのを出したの。95がすごかったもんだから、みんながわーって買いに行った。
でも、96はダサくて売値が上がんなかった。人気が出ると思ってファッションを知らずに転売目的で買った人たちは痛かっただろうね。

こちらもユージさんのコレクション。最近、価格が高騰気味のデータバンクは、メカニカルなのにレトロな面構えが唯一無二の存在感。

鳥居 時計も楽しそうだよね。

ユージ 鳥居さんは時計好き?

鳥居 時計はしてなかったんです。脈を止められる感じがして嫌で。時計って脈と一緒にどっどっどってなるから、アドレナリンが出ちゃって癒しにはならないんだって。だから今までほとんど付けたことない。

ユージ そういう理由でしないんだ。俺も休みの日は時間気にしたくないから時計しないよ。

鳥居 それすごくいいと思います。…この時計についてるのはマイク?

ユージ マイクじゃない。これはね、データバンクっていう時計で、電話をかけられるの。プッシュホンで、登録した番号の音を聞かせることで電話が掛けられた。

鳥居 ん? これで電話できるってこと?

ユージ それはできない。テレメモって言って、電話番号を登録して音を鳴らすだけ。番号を覚えておかなくても掛けられて、当時ではめっちゃハイテクだったんだよ。

鳥居 そこまでするならボタン押したらいいじゃん(笑)

ユージ こっちもすごいよ。漢字データバンク。漢字を検索できるの。試しになんか調べてみよう。

鳥居 へぇ、「鬱」! 書くとけっこう難しいんですよね。

鳥居 おー! 出てきた。すごい!! 難しい漢字も出てくるんだ。

ユージ 当時の最先端だったんだよ。内緒だけど、高校のときこれで漢字テストやってた(笑)

■とりいのーと:CASIO データバンク

©ユニバーサル・ピクチャーズ

元は計算機メーカーだったCASIO(当時は「カシオ計算機」)が1984年に発売した電子手帳搭載型の腕時計。ユージさんが持ってきてくれた「テレメモ」「漢字」のほかには、「電卓」「列車の時刻表登録」などが発売されていた。名作SF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985)にて主人公のマーティが付けていたことでもよく知られる。
また、昨今の90’sブームに際して再注目され、ストリートからモードまで幅広いスタイルで支持を受けている「熱い」アイテムでもある。

2限目 柄モノ初心者は「柄×柄」で着ろ!

 ユージさんは今日、カモ(迷彩)のミリタリージャケット着ていらっしゃいますけど、ミリタリーのアイテムがファッションに馴染み始めたのも90’sくらいなんですか?

ユージ 確かに普段着とかファッションアイテムとして受け入れられてきた時期だったかなと思う。それまでは軍人しか着ないというか、仮に一般の人が着ててもミリタリーファンとかマニアが着てるっていうイメージが強い服だったから。

鳥居 私、なんか迷彩着ててむなしくなったことある。コンクリートのなかじゃ隠れられないじゃんって。

ユージ 迷彩はそういう意味じゃないの。ボブ・マーリーとかもそうなんだけど、本来軍人が戦うときに着るものを軍人に着せないで、一般人の自分たちが普段着として着ることで反戦を表明するって意味があるんだよ。

鳥居 そういうことなんですか。それ、私もずーっと思ってるメッセージだよ。

雑誌「FRUiTS Vol.19」(1999年2月発行)より

鳥居 私、シャツを全然着ないんですよね。そのまま寝っ転がれるような服がよくて。だから柄シャツとか、今まで着たことないようなの着てみたいなぁ。

ユージ 柄シャツを着たことない人が着るなら、振り切ったほうがいい。柄と柄を合わせたりとか。90年代当時は何でもありだったからね。アロハシャツにチェックパンツとか、そういう一見するとめちゃくちゃなファッションが許され始めた時代だった。
迷彩もいいけど、当時も夏の定番だったアロハとかも似合うと思うよ。

雑誌「FINEBOYS」(1992年5月発行)より

■TFC STYLING


アロハシャツ:used
Tシャツ:used
ショーツ:used
スニーカー:GROUNDS(鳥居さん私物)

鳥居 わぁーかわいいね。こういうの大好き。ヤモリも、これは普段着にしたいくらい。

 ここまでパキッとした鮮やかなカラーリングも今だとあんまり見ませんね。

ユージ 今はアースカラーが主流だからね。
あとアロハを着るときは、足元にビーサンとか持ってくるとバカンスの人になっちゃうから、革靴とかテック系のスニーカーとか履いてあげるといい。一気にファッション感が出るからね。

3限目 古着は”塩むすび”

鳥居 ユージさんは古着以外に目移りしたことってないんですか?

ユージ 目移りしたよ。「Vivienne Westwood」も見てたし、「Comme des Garçons」も着たし。服として全体を見たくてあえて浅く広く楽しんでたね。古着もハイブランドもカジュアルブランドも好きだし、革靴もスニーカーも履くし。

鳥居 服全部を愛してたんだ。

ユージ だから何でもすきなんだよね。鳥居さんはどのあたり通ってきたの?

鳥居 高校生くらいは「MILK」とか「Vivienne Westwood」とか着てましたね。あとは「CYBERDOG」とか「beauty:beast」とか、色々着てすごくごちゃごちゃしてた。

ユージ そのへんは原宿カルチャーだね。厚底とかね。

鳥居 うん。「ロッキンホース」。ゴス(ゴシック・ロリータ)してたときは。

■BRAND DATA
No.08:Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)

画像出典:Vivienne Westwood

ABOUT
イギリスのパンクファッションシーンを象徴してきた名ブランド。1990年代には上流階級である貴族を茶化す小生意気な女の子像を描き、「パンク=チェック」のイメージを作りあげた。
日本への上陸は1993年の日比谷。アイコニックなオーブ・ロゴほか、アーマーリングやロッキンホースなど、数多くのアイテムで熱狂的な人気を集めた。

■とりいのーと:ロッキンホース

雑誌「FRUiTS Vol.7」(1998年1月発行)より

ストリートを席巻していた「Vivienne Westwood」のアイコニックなアイテムの1つ。特に90年代のロリータ・ファッションを象徴する足元と言える。

ユージ 今もそっちでしょ?

鳥居 黒はね。でも色々似合わなくなっちゃったんですよ。古着を着てたときは髪をピンクにしてたんですけど、黒にしたらなんか地味になっちゃって。それで服のほうを派手にしようと思って、色々変えました。
古着って難しくないですか? センスが一番問われてる感じがする。

■とりいのーと:とにかく派手なヘアスタイル

雑誌「FRUiTS Vol.11」(1998年6月発行)より

90年代、ストリートを歩けば目についたのは「派手髪」。
金髪、赤、ピンク、青、緑…なんてものはもはや当たり前。刈り上げたり、左右で髪の色を変えてみたり…とにかく派手スタイルが多かった。

鳥居 古着って卵焼きとか塩むすびみたいに、自分の力量が試されると思うんですよ。このブランドの服買っとけば間違いない、みたいのがないし。

ユージ 今、古着を楽しんでる人も分かれるんだよね。わーっと何でも置いてあるなかから自分で探し出したい人と、そのお店のセレクトが好きで古着を買う人。今はもう、古着が1つのブランドみたいになっちゃてるから。

鳥居 昭和を生きてきた人は「古着なのに何でこんなに高いの!」ってびっくりするよね。

ユージ でも「RALPH LAUREN」とかは、新品がめちゃくちゃ高いから古着のほうが手に取りやすいよ。

■BLAND DATA
No.09:RALPH LAUREN(ラルフローレン)

画像出典:JALショッピング

ABOUT
1992年のバルセロナ五輪にて、アメリカ代表チームの公式ユニフォームとしてデザインしたコレクション「STADIUM 1992」を発表したこと。
また、1994年に日本にも上陸した「POLO COUNTRY」の後継である「RRL」は服の作りが大きく、価格帯も低かったため、アメリカでも日本でもオーバーサイズのストリートファッションとして人気を博した。

鳥居 でもね、古着は有名なブランドを身に付けたら負けなんですよ。

ユージ そう、ホントそこ。今日、俺はそれを1番言いたい。今はもうね、古着を買いに行くんじゃなくて”〇〇を探しに行く”みたいになってるんだよね。「俺はこれ着てるぜ」って古着がブランドになっちゃってるんだけど、誰も着てないものを探し出して着るのも古着の醍醐味だから。そっちの楽しみ方もしてほしい。
「何年代の〇〇が欲しいんです」とか言われても、古着本来の楽しみが狭まっちゃう感じがするよね。

鳥居 知らずに買っててそれならいいんですけどねぇ。あ、これかわいい!

ユージ それうちでブリーチの加工したやつ。

鳥居 え、私の父親もブリーチだったの。

ユージ&編 父親もブリーチ…??

4限目 みゆき学長の洋服的バックグラウンド

鳥居 よく分かんないけど、染色とかブリーチとかをする職人だったんです。母親は縫うほうの職人でした。

ユージ でも自分では服飾のほうにいかなかったんだね。

鳥居 私、すっごい不器用なんですよ。それに両親が服飾だとね、ダメ。あ~そこ違うとか言って、やられちゃうのよ。だから私、ボタンつけすらうまくできない。教わってないんだもん。できる人ってやりたがりだから(笑)

ユージ そのハーフパンツは本当にペンキ塗りが使ってたやつでさ。

鳥居 すごくいい! リアルな汚れがいいよね。ユージさんさ、白いシューズはどっち派?

ユージ 俺は汚す派。

鳥居 私も! 白いスニーカー買った日にドッグランに行って汚す。犬飼ってないけど。

ユージ&編 (笑)

ユージ 鳥居さんは、どうやって古着を探したり選んだりしてたの?

鳥居 んー、ここにこの色ほしいなとか、このTシャツいいじゃんとか…。ブランドとかあんまり知らないんだもん。

ユージ 女の子はそうやってデザイン重視で選ぶほうが多いかもね。でも、当時もすでに「Vivienne Westwood」の中古とか古着ってあったでしょ?

鳥居 あったのかな。古着は古着って思ってて、「Vivienne Westwood」とかブランドものは新品がいいって思ってたから。

ユージ だけど買えるもんじゃないでしょ。高かったじゃん。

鳥居 それが、父が「Vivienne Westwood」とかを買い与えてくれたんです。

ユージ え?

鳥居 これを身に付けなさいって。

ユージ すごい、英才教育だ。

鳥居 スウェットだったら、生地とか縫製がしっかりしてるから「SUPER LOVERS」がいいとかって感じで。でも少しずつ自我が芽生えるから、そのなかでちょっと違う方向性になっていったんですけどね。

■BLAND DATA
No.10:SUPER LOVERS

雑誌「FRUiTS Vol.8」(1998年2月発行)より

ABOUT
デザイナー田中康晴がダンス、パンク、オールドスクールなどに影響を受け1988年スタートしたスーパーラヴァーズ
1990年代から2000年代にかけて東京、ロンドン、香港などを中心にファッションに音楽、アート、などの多様なカルチャーとLOVE(寛容性)を取り入れたブランドの一つとして多くのファッションキッズとアーティストなどに愛されました
その寛容的でポジティブなメッセージが共感され日本ではティーンズ
ブランドとしてもブームになりました

――引用:SUPER LOVERS公式

5限目 未体験の領域

鳥居 このお店は地下もあるんですよね。行ってみたいです。

ユージ 行こう行こう。鳥居さんがきっと全く通ってこなかった感じのが揃ってるよ。

鳥居 ほんとだ。スポーツ系は全然着たことないです。

ユージ 普段着ない人にこそ挑戦してほしいのよ。

鳥居 バカにされないかな。絶対やんないじゃーんって。
縁がないんですよ、スポーツと。前にも、山登りしただけで「どうした鳥居みゆき」ってなったんですよ(笑)

ユージ 着方だよ。たとえばオーバーサイズでワンピースっぽく着たりとか。

超オーバーサイズのバスケタンクにフィッシングベストをレイヤード。着こなしは自由なのだ。

ユージ かわいいじゃん。普段着ないよってやつをこうやって挑戦的に着てほしい。

鳥居 ほんとだぁ。かわいく着れますね。結局さ、不安を感じずに堂々としている顔が大事なんだよね。

ユージ そうそう(笑) 「ワンピースですが何か?」って顔してればいいのよ。

鳥居 こういうバスケタンクとか、フィッシングベストとか、もともとはファッション用途じゃないものがファッションに取り入れられていったのってどれくらいからなんですか?

ユージ 80~90年代にかけてかな。やっぱりこの時期が大きくファッションが変わっていった時代だね。

鳥居 ねえ、ユージさん。あれは何で切ってあるの? ユージさんのリメイク?

ユージ あれはもともと。でもちゃんと理由があって切られてるんだよ。

ユージ 昔のスウェットって首が詰まってた。海外の人たちが着てたときはスポーツウェアとして着てたから、アメフトのヘルメットとかを被ったまま着たり脱いだりできるようにって切ってるんだよ。だから古着で出てくるパーカーとかスウェットって、けっこう切ってあるのが多い。

鳥居 じゃあわざと切って、それからビンテージになったってことか。

ユージ そう。それにたぶん切るときに深く考えてない。もし今俺たちが切ろうと思ったら、何センチ切ったらかっこいいかなとか考えちゃうじゃん。ファッションとは無関係な無造作さが味になってるんだよね。

鳥居 へぇ~面白い。かわいいね。

ユージ あとは「GUESS」とかも当時を象徴するブランドだね。今でこそ復活してるけど、90年代に入ってきた新しいアイテムでゼロ年代にはなくなったブランドだから。

鳥居 私、「GUESS」は1981年生まれで同い年なんです。「?」がかわいいよね。

ユージ もとはデザイナーズブランドだったんだよね。着てみる?

鳥居 着てみたい! さっきのG-SHOCKもつけたい!

■90s STREET ARCHIVE

雑誌「FRUiTS Vol.11」(1998年6月発行)より

■TFC STYLING

帽子:used
シャツ:used(Polo)
ボトムス:used(GUESS)
シューズ:NIKE(ユージさんコレクション)
時計:G-SHOCK(ユージさんコレクション)

 リーバイスとかじゃなくて「GUESS」なんですね。

ユージ 「GUESS」は当時入ってきた新しいもので、HIP HOPのカルチャーは常に新しいものを身に着けたいって気持ちが強かったのよ。

■BLAND DATA
No.11:GUESS

画像出典:NY POST

ABOUT
1981年、マルシアーノ兄弟によって設立されたブランド。日本には90年代初頭に上陸し、ジーンズブランドとして一世を風靡した。
2005年に一度撤退していたが、2014年に日本法人が設立されて復活。
「?」マークのロゴTシャツなどは象徴的なアイテムになっている。

■とりいのーと:CASIO G-SHOCK

落としても壊れない時計を作るという無謀とも思える挑戦のもと、2年の開発年月を費やして1983年に生まれたタフネス・ウォッチの代名詞。
ユージさんが持ってきてくれたのは、G-SHOCK初のアナログ/デジタルコンビモデルであるAW-500。95年あたりに購入したものだそう。買った当初はクリアだったバンドやケースは30年近い経年変化によって、味のあるクリームカラーに変色している。

鳥居 このシャツの色もすごくかわいい。持ってないし、普段着ない色だけどすごく好きな色です。

ユージ 本来だとトラッドとして紺のブレザーと着たり、タイドアップしたりするようなオックスフォードシャツを、あえてドレッシーに着ないところなんかもポイントだったよね。

HR ”誰かと同じ”なんてイヤだ!

今回は前回(デコラ編@はやとちり)と異なり、未体験のフィールドへと踏み込んだみゆき学長。

他の人が誰も着ていないものを探して着たり、
新しく入ってきたブランドを素早く取り入れたり、
スポーツやトラッドなど別のテイストのアイテムを自分たちのスタイルに落とし込んだり、

スケーターやHIP HOPのカルチャーが根付くB系ファッションにもまた、自由にファッションを楽しみながら構築されていったスタイルがあった。

そこには「周りと差をつけたい」「人と違う自分でいたい」というような、決して飽くことのない青い欲求があったのかもしれない。

■SHOP DATA
No.03:upperupper

■BRAND DATA
No.08:Vivienne Westwood
No.09:RALPH LAUREN
No.10:SUPER LOVERS
No.11:GUESS

👖これまでの「鳥居服装学院」も要チェック

■鳥居服装学院×upperupper

90’s当時を象徴するデータバンクに夢中なUGさんと鳥居さん。

~放課後~ ”カッコつけないくらいがカッコいい”


■鳥居みゆき(とりい・みゆき)
1981年生まれ。2001年に芸人デビュー。「ヒットエンドラーン」のネタでブレイクする。映画・ドラマ・舞台出演のほか、小説・絵本の執筆も。発達障害をテーマにした番組『でこぼこポン!』(Eテレ)に出演中。
Instagram:@triimiyukitrii
YouTube:「鳥居みゆき地獄」

■upperupper
ADDRESS:東京都台東区上野6-2-5 塚本ビル1F
OPEN:12:00~20:00
Instagram:@uprupr
ONLINE SHOP:https://upperupper.jp


ライター:小梅之々(こうめこれこれ)
Twitter(X):@korekore_koume
ケムール編集部員。前は古着屋。潰れたソフトケースのなかにあるしわしわの煙草がすき。担当連載は「鳥居服装学院」「Talk at Fillers」「ネオホームレス-自由と稼ぎの流儀-」
株式会社アクロスソリューションズ所属。
HP:https://www.acrossjapan.co.jp/

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