ひろゆき ”タバコを存続させる方法”をゆるく発明してみましたw |直撃取材「#たばこのことば」

愛煙家の方々がけむりを通して見えたもの・考えたことを伺う直撃取材です。今回の愛煙家は、ひろゆき氏(実業家)です。

 

ついに、この日が来てしまった。
1999年「2ちゃんねる」。2006年「ニコニコ動画」。数あるインターネットカルチャーの中で傑作中の傑作と言えるサービスを生み出した伝説の実業家。

「ひろゆき」氏、ケムールに登場です。

Twitterフォロワー238万人、Youtube登録者数159万人。
2022年、日本全国の15歳~24歳の男女が選んだ「いちばん信頼している/参考にしているインフルエンサー・有名人」HIKAKIN氏に次ぐ2位(LINE調べ)。高校生が選ぶ「政治家になってほしい有名人」3位(アイ・エヌ・ジー調べ)。
いまや日本でもっとも影響を持つ論客のひとりと言える。

ーーそして「喫煙者」である。
何時間かに一回、ニコチンを摂取するために喫煙所に行くわけではない、喫いたいときだけ喫うタイプの「機会喫煙者」なのだ。Youtube配信でも「家では全く喫わない、もう2ヶ月喫ってない」「今からタバコを喫うってバカだよね」とか発言しているが、はたしてその真意は?

というわけで、今回は政治でもビジネスでもテクノロジーでもゲームでもない「タバコ」の話オンリー…いままでどのメディアも聞かなかった「愛煙家・ひろゆき」に迫ってみた。
ひろゆきさんの発言はテレビでもネット上でも賛否両論を呼び、ニュースになり、炎上する。
どうせこの記事も炎上するんだ…ではどうぞ。

ひろゆきが煙草を喫う理由

出典:ひろゆきのマインド【#ひろゆき #hiroyuki】《切り抜き》

ーー ひろゆきさんは「機会喫煙者」なんですよね。

ひろゆき そうですね。チェーンスモーカーの人に比べると依存してないと思います。アメ玉とかと一緒で、あればなめるけどわざわざ買いに行かない。

ーー 喫いたくて我慢できん! という状態にはならないのでしょうか?

ひろゆき お酒飲んでるときとか、一緒にいる人が喫ってるときには自分も喫いたくなりますけど、我慢できないって感じにはならないですねー。
そもそも喫いたいときは一緒にいる人にもらうので、自分でタバコ買うこともないですし。

ーー もらいタバコなんですか。

ひろゆき タバコ、もらえますよ。買うなら空港の免税店で。正規の値段で日本でタバコを買ったことはほとんどないです。
まあ、服も買わないし、お酒もビールしか買わないし。ゲーム以外の嗜好品にお金を使わない生活なので。
喫うのも1mgの銘柄ばかりだから、ニコチンが欲しくて喫ってるわけでもないんですよね。タバコを喫うのは、煙を吐くのが好きなので。煙で「輪っか」を作るのが面白いんですよ(笑)。

ーー 「輪っか」がタバコを喫う理由って…。

ひろゆき 高校生の時に「輪っか」が流行ったんですけど、それを今でも好きでやってる感じです(笑)。
でも、喫煙者で得をしてることは結構あると思いますよ。
煙草は、喫うことによるコミュニケーションが割と大事という気がしています。喫煙者ってどこでも知り合いが作りやすいんですよね。
どこかの会社の会議に行って休憩に入ると、喫煙所に行く人って10人にせいぜい2.3人なんですよね。そこでタバコ喫いながら雑談してると、プロジェクトの内実とか思惑とか聞けたりするんです。

ーー たしかに喫煙者は肩身が狭いこともあるのか、なんとなく身内感が出ますね。

ひろゆき あとタバコが良いのは、「間」が取れるところじゃないですかね。質問した時に相手が何も答えなかったら、ふつうは別の質問をしたり他の人が話題を変えたりしますけど、煙草を喫っていると、1分とか待てたりします。そのうち、考えたことをポロっと言ったりする。タバコがない状況で「1分間の沈黙を耐えてください」というのは大人には無理かなと。

「タバコ規制」を考える

ーー カルチャーとしての視点からはどうですか。昔はカッコよくタバコを燻らす映画スターに憧れた時代がありましたが、いまはコンテンツ産業のなかのタバコの扱いは年々厳しくなっています。

ひろゆき コンテンツからはどんどん排除されていますよね。たしか「ワンピース」のアニメの海外版では、サンジがタバコじゃなくてキャンディをくわえるように修正されてるはずです。法的にも、子供が見るものに煙草を出してはいけないという国はどんどん増えているし、アメリカの映画のレーティングにもタバコを喫っているかどうかは関わるんじゃないですかね。

アニメ版『ワンピース』※右が海外版 ©集英社 画像出典:Quora

ひろゆき それでも「ワンピース」はよく残っていると思いますよ。あんなに子供に影響を与える作品なのに、タバコを描き続けている。めちゃくちゃ苦情が来てると思いますが、集英社がよく守っているなと。だって、海賊がタバコのかわりにアメくわえてたら、サマにならないじゃないですか(笑)。
タバコはかつては「大人」の象徴として使われていた。でもいまは「健康に悪い」という正論に押されて衰退してますね。まあ、喫わないで生きていけるんだったらそのほうがいいよね、っていうのは、まさに仰る通りなので(笑)。
お酒と一緒で「飲みニケーション」とか言いつつ健康に悪いのは事実ですから。

ーー そういえば、同じ成人が楽しむ依存性のある物質なのに、アルコールはほぼ規制されませんね。喫煙者も酔っ払いも、どっちも迷惑と言えば迷惑だと思いますけど。

ひろゆき うーん…規制の話でいうと、「禁止すべきか」というより「禁止できるか」という問題だと思います。
まずアルコールとタバコでは、利害関係者の人数が違いますよね。たとえば国がアルコールを禁止にすれば、お酒を商売に使っている飲食店も含め敵に回すことになるから、実現が難しい。
一方でたばこはJTとタバコ屋さんだけですから。コンビニもタバコを売っていますが、ものすごく儲けているわけじゃない。

ーー タバコを制限した時に声を上げる人が少ないから、規制も進みやすいということですか。

ひろゆき もうひとつ別の視点では、”自家製”ができるか、という問題がありますね。たばこって作るのがすごく難しいので、禁止しても「闇タバコ」が出回る確率は低いと思うんです。海外から輸入するくらいしか手がないんじゃないかと。
一方でお酒は、禁止したとしても家庭で簡単に作れちゃうんですよね(笑)。取り締まりにくい。
なので、20~30年すると、煙草に替わって「大麻」が広がっちゃうんじゃないですかね。

タバコはマ●ファナに勝てるのか?

ーー たしかにタバコは栽培してから乾燥したり熟成させたり、手間ひまかかっていますからね……って、大麻に替わるんですか!?

ひろゆき 大麻も庭先で作れちゃうから規制が難しいという問題がずっとあります。だから税金を高くつけるのも難しい。タイなんかは国民に大麻の苗を配って育てさせたりもしてますし。カナダも合法、アメリカでも州によっては合法。連邦法ではもうOKとバイデン大統領が言っているくらいで。
アメリカでもタバコは高くなっているからタバコじゃなくて大麻から始める人が多いんじゃないですかね。ちびちび吸えば量も少なくて済むし、実は地域によっては大麻のほうがコスパが高い地域のほうが多かったりします。
個人が庭で栽培しているような大麻はタダ同然で流通している現状もあります。もちろん違法なんですけど、大麻合法の州で自家製の大麻を吸って逮捕されたという話は、僕は聞いたことがないですね。

ーー 違法の大麻より、タバコのほうが規制しやすいって…。

ひろゆき 何十年かすれば、昔タバコというものがあってね…という話になるんじゃないですか(笑)。
まあ、日本の場合は全面的に禁止にはならない気がします。ヨーロッパも個人の権利が根強いので無理かな。シンガポールとかはやりかねないですけど。
ただ価格がめちゃくちゃ高くなって若い人は手が出せなくなり、文化としては衰退していくという感じじゃないでしょうか。

ーー そんな理詰めで言われたら…大麻が合法化して台頭してきたときの煙草の価値とは…。

ひろゆき 価値はあると思いますよ。煙草の価値は、ドラッグでありながら仕事する能力があまり落ちないところなんですよね。アルコールや大麻だとちょっと頭が悪くなるんですけど、ニコチンはそこまででもない。人によっては冴えちゃう人もいるわけです。仕事をしながら使えるドラッグとしては唯一かもしれませんね。

ーー 広い意味でのドラッグでは、コーヒーやお茶に含まれてるカフェインもそうですね。成人しないと楽しめないドラッグではタバコだけかも。

ひろゆき もしその価値が見出されて、仕事中にストレスを感じた人がタバコを選ぶようになれば、将来的にも需要は残るのでアリかもしれない。でも今のところそうはなっていませんよね。タバコの可処分所得が、カフェに流れるというほうが現実的かもしれないです。

”タバコ絶滅”を防ぐ方法

ーー どうしたらいいのか…。

ひろゆき たとえば「郷土のタバコ」のようなものを作れるようにして地場産業にするーーというのはどうですかね?

ーー 郷土のタバコ?

ひろゆき 各地域ごとで作る。コーヒーや紅茶って土地柄で出てくるものが変わってきて、豆はエチオピアがいいとかニカラグアがいいとか、特色があるわけです。ワインやチーズもそうですよね。
それらと同じで「北海道のタバコは味がいいよね」とか、「九州旅行に来たから九州のタバコを喫ってみよう」という楽しみ方ができれば、文化として続く余地はまだあるかもと。

ーー ワインでいう「テロワール」みたいな楽しみ方ですか。地酒で地元のお米や湧き水を使っているとか。

ひろゆき 葉巻の場合は成り立っていますよね。キューバに行くと、この葉っぱが・熟成が・巻き方が…と教えてくれて選ぶという。

ーー たばこを自分で巻く「手巻きタバコ(シャグ)」にはそういう趣味性があります。以前ケムールで「Von kraren」という手巻きタバコ屋さんを取材したんですが、そこではタバコ葉と巻き紙の組み合わせや、葉っぱの産地や湿度まですべて教えながら売ってくれました。それを客に教えるのが、本来のタバコ屋の役目だと。

“もし鰻重を頼んだとすれば、うなぎは絶品で裏側まで美味しい、でも米はなんでもいい….というわけにはいかないはずだよね。だからたばこ葉も紙もすべて選ぶべき、それができるのがシャグなんです。”

 

【シャグ入門】”手巻きたばこのドン”が語る「極上の煙草」の世界

ひろゆき そういう文化がタバコでもありうるはずなんですが、日本のJTによる専売体制では、タバコって「産地ごとの農作物としての味の違い」という概念がなくなってるんですよね。無個性化されてしまっていて、買っている人も売っている人もわかっていない。
なので、各地域ごとにJTができたらいいんじゃないですかね。農協みたいになればいいのかなと。そうすると産地の特徴を出してくると思うので、役所の人が地元のタバコを喫っています、と発信するみたいな状況になれば、それはそれで文化として残る可能性はあるかと。特区みたいな形で各地域のたばこ生産を自由化して、町おこし・村おこしにするのはアリかなと思います。

喫煙者は「ごめん」しか言えない

ーー 愛煙家と嫌煙家はどう共存していくか、というのも長年の困ったテーマでして。

ひろゆき 僕はきっちり分煙したほうがいいと思いますね。そのほうがトラブルが減る気がします。
愛煙家・嫌煙家問題は「タバコの煙が迷惑だ」というニオイや健康被害などの視点で見るのか、ベジタリアンと肉を美味しいと思って食べる人のような「嗜好」の観点で見るかで変わってきますよね。
「迷惑」という話だと、タバコ喫ってる人は「ごめんなさい」しか言えない(笑)。合理的に考えたら頭悪いですからね(笑)。お金を払って健康を害しながら、他人に嫌な思いをさせているという。

ーー ぐっ…。

ひろゆき でもそこは許容度の問題で。汗をかいてクサいおっさんに、その文句を口に出して言うのが正しいのかというのと同じじゃないですか。不快なのはわかるけど、その人がいていい場所だったら自分が引くっていうのもアリなんじゃないかと。
もうひとつ、「嗜好」の話なら、ベジタリアンが家畜をかわいそうだと思ったり、目の前で肉を食われるのは嫌だと考えるのはわかる。それでも肉が好きな人は食べればいいし、お互い「そういう人たちがいる」ということで尊重すればいい。それと同じように愛煙家・嫌煙家も共存すればいいんじゃないですかね。
僕は飲食店だったら室内は禁煙で、タバコは外の灰皿で喫えるカタチがいいと思ってます。僕が住んでいるフランスでもそうですが、世界ではだいたいの国は室内禁煙で、屋外は喫える国が多いですし。
でも日本では、特に都内だと屋外禁煙の地区が増えてるんですよね。だから室内に喫煙所があったりするんですが、すごい矛盾をかかえている気がして(笑)。
居酒屋でも室内でモクモクタバコを喫って、外に出ると煙草を喫えないという。僕が知ってる限り、そんなよくわかんないルールの国は日本だけなんですよね。

ーー この連載で取材したジャーナリストの須田慎一郎さんも同じことを言っていました。

“日本が設定した喫煙ルールはグローバルスタンダードにすらなっていないわけです。「ガラパゴス化」している。喫煙行為には日本特有の歪みが凝縮されています。”
ーー須田慎一郎

須田慎一郎 たばこと社会 ”愛煙家”はどこへ向かうのか!?|直撃取材「#たばこのことば」

ひろゆき そう、日本だけ。だから日本に来て室内で煙草を喫っていると、なんか悪いことをしてる気がするんですよね。周りを見渡しちゃったりして(笑)。

ーー 2015年からフランス・パリに移住されていますが、パリのタバコ事情はどうですか。

ひろゆき フランスにはそもそも喫煙所という概念がないかも(笑)。みんな路上にポイ捨てするので。罰金があるという説はあるんですが(※あります。吸い殻のポイ捨ては68ユーロ:編集部)、払ってるのは見たことないし、ポイ捨てを注意している人すら見たことがない。パリだけでタバコの吸い殻が年間350トン捨てられてるんですよ(※2017年の資料より:編集部)
でも、コロナ以降で一気に喫煙者は減りました。コロナ前は外を歩いているとタバコの煙を嗅がない日はなかったんですよ。いまは煙草のにおいがして、あっ、喫っている人がいるんだなと気づくくらいの変化。

「ヒマ」を生み出す道具

ーー そんなに変わったんですね。

ひろゆき たばこの値段が上がっているせいもあってvape(電子タバコ)を喫う人が増えているようにも見えますね。
vapeは僕も吸っていた時期がありますが、蒸気が直接ノドに当たって荒れることがあってやめたんですよね。デバイスの安定性が上がればもっと流行るのかもしれません。

ーー vapeは日本では「持ち運びシーシャ」と呼ばれたりもしていますが、シーシャはどうですか。

ひろゆき けっこう好きです。誘われたら喜んで行ってますね。日本のシーシャはお金持ちが行きがちな変なブランディングをしている気がします。
東南アジアとかだと、割とどこでもシーシャが置いてあって、フレーバーも2.3個。ハイクラスな人がわざわざ好むというものでもないし。

ーー たしかにシーシャ屋さんを取材したとき、日本のシーシャは世界でも独特な受け入れられかたになっていると聞きました。女性の利用者が多くて、タバコ・カルチャーの中でも異色です。魅力はなんでしょうか。

”シーシャは炭をおこして喫い終わるまで、だいたい2~3時間かかります。そのあいだ、ソファにゆったりと座り、お茶やお酒を楽しみながら、作業をしたり本を読んだり。そうした時間の中で周囲の人との会話が生まれることもあります。そして店に通うリピーターが生まれていく。都会の喧騒を離れてリラックスできる「サードプレイス」として、とても価値が高いのです。”

 

”火付け役”はだれだ?謎のタバコカルチャー「シーシャ=水たばこ」の現在を探る

ひろゆき 魅力は…「ヒマ」ってことじゃないですかね(笑)。
サウナがやたら都市生活者に流行っているのも日本だけだと思います。精神を変容するコミュニケーションの手段という意味では似ていますよね。
喫煙者はニコチンでそれを補っているけど、いろいろな事情でタバコに行かない人がストレスたまったときにシーシャやサウナを選んでいる面もあるのでは。
タバコもそう。コミュニケーションにおいて「間が持つ」というのは結構大事な気がするんですよね。

日本におけるたばこの産業的な課題に言及したかと思えば、個人的な経験に着地する。誰が言い出したか知らないが「論破王」と呼ばれるとおり、ひろゆき氏は間違いなく議論のプロだ。
そして何よりも、話を聞き・答えるプロだった。取材はパリとのリモートで行われたが、画質が良いカメラを使い、インタビューの時はモニターが横にあるにもかかわらず常に前を向いて話していた。
メディアアーティストの落合陽一氏がケムールの葉巻に関するエッセイ分煙化による思考時間の減少傾向について|特別寄稿「#たばこのことば」で語ったところによれば、たばこは「深く思考する」独りの時間のためのアイテムだ。一方でひろゆき氏は「相手と1分間の沈黙を待つ」コミュニケーションの道具だと言った。対照的で、どこかつながっている。


ひろゆき

本名:西村博之。1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学に進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設、管理人に。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。著書に「1%の努力」「99%はバイアス」(ダイヤモンド社)「僕が親ならこう育てるね」(扶桑社)等。

Kemur PICK UP:喫煙具にこだわりは?

画像:たばこのことば▶【ヴィンテージライター展】「ライター」が照らした火と人間の1世紀 より

ないですね。誰かからもらった使い捨てライターです。
どちらかといえば、という話ですが、ライターよりマッチのほうが好きかな。火を点けるのが好きなので。身近で「火をともす」機会って、タバコ文化がなくなったらほぼ絶滅するんじゃないですかね?(談)

「郷土のタバコ」を作れるようにして地場産業にするーーというのはどうですかね?
ひろゆき

あわせて読みたい