【2023年・魔女の儀式リスト】魔女が教える秘密のシャグ・カクテル＝WHEEL OF THE YEAR

現代魔女のライフスタイルを儀式・料理・そしてシャグ（手巻きたばこ）で紹介する連載。読者のみなさまのおかげで2年目。

あけましておめでとうございます。
1月は特別編。2023年のはじまりにふさわしく、魔女の儀式を一年分、一気に紹介します。

▶いままでの『魔女シャグ』はこちら

弥冨マハ
現代魔女術実践家
生きものから食べものへ　育み刈り取り繋ぐ者として｢食｣を通して母なる大地との循環を伝える者。
大阪道頓堀の川沿いにある隠れ家Restaurant＆BAR 魔女の厨房CAULDRONのオーナー兼シェフ
辺境国を旅する事と異国の飯と煙草が好きな人。

現代魔女のカレンダーをつくろう

2023年のはじまり。皆さんは今年はどんなカレンダーを使うことにしましたか。

記事を読みはじめる前に、すこし「カレンダー＝暦」について考えてみましょう。

月の満ち欠けをもとに日数を計算する、１ヶ月単位の太陰暦。太陽の運行によって季節を知る太陽暦。それらはもともと、農耕社会に生きる人々にとっては生活と結びついた自然の暦です。
日の出とともに起きて、日が暮れたら家路につく。そんな牧歌的な生活のなかの時間を人々は生きていました。

でも現代社会ではカレンダーは社会生活を営むための日程表としての役割しか与えられていません。私たちは、暦に追い立てられるような日々を過ごしています。
さらに時計が追いうちをかけて１日を細分化します…もうカレンダー通りの祝祭日なんて夢のまた夢(血涙)。

だからこそ、今回は原点に戻って、自然と神々のサイクルにそったカレンダーを眺めてみて。
それが、1年の魔女の儀式＝4つの大サバトと、4つの小サバトを記した暦。
「WHEEL OF THE YEAR」。
魔女の暦を紹介しながら、去年までの連載記事での儀式を振り返っていきます。

よかったら、あなたのカレンダーに書き加えてみてくださいね。

1年かけてどっさり巻いたシャグ・カクテル（13レシピ）つき。たばこの煙は、神々への捧げものですから。

12月✡ユール【小サバト：冬至】（12/21～1/1）

まずは「ユール」。
私たち魔女の1年は、ユールにはじまりユールに終わります。
古代ヨーロッパのゲルマン民族、ヴァイキングと呼ばれる人々の間で冬至の頃に行われたこの祭りはのちにキリスト教に取り込まれ、私たちがよく知るクリスマスになりました。
北欧諸国では現在もクリスマスの祝祭を指す言葉です。
古代ローマの冬至祭であるサートゥルナーリア祭、キリスト教のライバルとされていたミトラ教(ゾロアスター教の発祥)で太陽神ミトラ神の再生の日、聖ルチア祭など、様々な宗教の流れを組み込んでいった祝祭。

そして、現代魔女を含む「新異教主義(ネオペイガニズム)」では、それぞれの家庭で祝われる祭りです。
この連載では、2022年のユールは「日本式ユール・ボード」として、山から引いてきた水を火にかけ、野菜と肉の旨味を味わうお鍋をつくって祝いました。

素材『マテリア』を投入し、『触媒』として味付けをする。『鍋』も”変性”という魔法なんです。料理はいちばん身近にある魔法のひとつ。

そしてシャグ・ブレンドは…ネイティブ・アメリカンが多く住むアメリカのサンタフェで生まれたタバコ「アメリカン・スピリット」をメインにコニカル巻きでアレンジしました🚬

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:13】Merry Yule

ちなみに、2021年のユールでは極甘な毒リンゴのシャグを巻きましたよ…！詳しくは記事で。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:２】ポイズン・アップル

1月✡儀式ナシ／魔女のお正月

1月は儀式はお休み🚬　お休みも大事。
ということで、「お正月」にちなんだ和風のシャグを巻きました。
ブレンドするスパイスはお屠蘇（お神酒）に入れる「屠蘇散（とそさん）」！シャグはBali Shag ハーフスワレと煙管用の「小粋」。　これが意外に合いました。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:3】omiki

2月✡イモルグ【大サバト】（2/1～2/2）

冬至のあとの二番目にある祝日が大サバト・イモルグ（インボルク）。2/1と2/2です。
「羊の乳」を意味するゲール語を起源とし、冬至と春分点の中間になります。もともとは古代ケルトの「立春」のお祭り。
ケルト民族の伝統における神々と自然とのサイクルの中では女神ブリギットが帰還する日、冬至のあと二番目にある祝日です。
ケルト神話の女神ブリギットは豊穣の女神。
祭壇をつくり、お供え物を燃やして捧げたり、願い事や克服したいことを書いて燃やし、祈る儀式。

シャグカクテルは太陽の属性を持つ「オレンジ」のシャグで作りました。「STANLEYオレンジ」にアニスとクローブをミックス。

鼻に抜けるアニスの香りが芳醇な、喫いやすいシャグでした。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:4】IMBOLG

3月✡儀式ナシ／エジプトへ！

3月は儀式はお休み🚬
去年のこの時期は、女神イシスに会いにエジプトに行ってました。記事では魔女とエジプトの関係から、遺跡巡礼、シーシャ＝水タバコめぐり、現地の謎タバコまでいろいろレポートしてます。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【特別編：イシスが導く魔法の旅】

4月✡オスタラ【小サバト：立春】（4/16）

女神オスタラ（image by Wikipedia）

４月１６日はイースター、復活祭としてキリスト教のお祭りとしても知られているこの日は女神オスタラの日です。
豊かさを象徴する春の女神オスタラはエオストレとも呼ばれ、太陽が昇る東を表します。
イースターという名前もまたエオストレに由来し「春分の日の後の最初の満月から数えて最初の日曜日」と決められています。

オスタラに捧げるシャグのテーマは苺！　ストロベリーフレーバーのシーシャをブレンドして超ストロベリーに。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:5】OSTARA

5月✡ベルティン【大サバト】（4/30～5/1）

ベルテーン（ベルティン）は、4月30日の夜から5月1日にかけて行われる「火の祭典」。丘の頂きや山などの聖なる場所で焚き火が行われます。
魔女たちの中でもベルテーンはとても有名！ドイツのブロッケン山では大きな焚き火の周りを魔女の仮装をした人々が踊り狂う盛大な宴が催されます。※現代社会に生きる本物の魔女が紛れていたりするかも？
別名「ワルプルギスの夜」と呼ばれています。本来は古代ゲルマン人の祭りでした。
元々は太陽の神様であるベルニュスを祀るお祭りで「ベルの火」という言葉が元になっているベルテーンが4月の終わりから5月の始まりに行われる理由は、春のピークと夏のはじめにかけて地球のエネルギーや生命力がとても活発になるから。『春から夏にかけて生まれる新しい生命を祝う』サバトです。
祭の前夜は霊魂や悪魔、精霊や妖精が集うと信じられ、この時期に森に入る場合は魔除けを持たずに行くと危険な目に遭うとか…😱

記事では祭壇のつくりかたも書いてます。

シャグ・ブレンドはケムール連載中の「魔女占い」で決めた8種のハーブ。ベルニュスに紫煙を捧げました。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:6】Offering-捧げ物-

6月✡リーザ【小サバト：夏至】（6/21）

夏至の祭り「リーザ」。この日は太陽の力が頂点に達する日と言われています。
力を与え、自分と向き合うサバト。「気持ちに区切りをつけたいことや自分の直したい悪い癖などを書き、大釜の中で燃やす」という儀式をします。

↑何を書いて燃やしたかは記事をチェック（笑）

シャグ・カクテルは「真夏の夜の夢」をイメージした”お酒”をブレンドしたレシピに。
インセンスのような香り高い煙草になりました。

6月にはもうひとつシャグ・ブレンドを。こちらもお酒フレーバーの珍しいシャグ「ROYAL BOURBON」を、同じくらい珍しい透明（！）な巻紙でアレンジしました。
記事では私が魔女になったころのこともちょっと書いています。

記事はこちら▶
■魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:7】SLOWLY SLOWLY

■魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:8】Midsummer night dream

7月✡儀式ナシ

儀式はお休み🚬

8月✡ルーナサ【大サバト】（8/1）

ルーナサ(ラマス)は夏至のリーザと秋分のメイボンの間にある一年の魔女の祝祭の中でも特別な日。
起源はケルトのお祭り。ケルトの太陽神で「光」をつかさどる神・ルーと、ルーの育ての母タルティウの（ちなみに生みの母は”エトネ”）神話から成り立ち、豊かな土地をつくることとひきかえに力尽きてしまったタルティウに感謝を捧げ、穀物(小麦など)の収穫と大地の恵みに感謝する日。
夏の終わりと初秋の収穫を願う、最初の収穫祭とされています。
儀式では捧げものとしてとうもろこしの人形「コーンドール」をつくります。

…カワイイですよね🚬

ちょっと余談。
魔女の暦＝WHEEL OF YEARの中にはありませんが、8/15-9/8はキリスト教暦では「マリアの３０日」と言われています。カトリックでは休日でマリアが天に召されたのが8/15、生まれたのが9/8とあり、薬草の束をマリアの祭壇に捧げる習慣が今も残っています。
この習わしは本来薬草を集める人々が山に登って薬草を捧げ、清めの儀式を行った時期だったそう。私は魔女としてこの習慣を行っています。

シャグ・カクテルは8月が旬の「桃」のフレーバーをベースに巻きました！ブラック・スパイダーのピーチ＋メンソールの結晶でアクセントを。

※そういえばこの月は映画『女神の継承』にハマってました。魔女的映画レビューは記事をどうぞ。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:9】Harvest＝収穫＝

9月✡メイボン【小サバト：秋分】（9/23）

メイボン（マボン）は秋分の日。春分・冬至・夏至と並ぶ4つの祝祭日で、古代より人々が祝って来た日のひとつ。
ケルトの祝祭であり、日本ではお彼岸、スラブ人たちは「アフセン」として様々な文化で祝われてきました。
エジプト神話、ゾロアスター教、マヤ文明でもこの秋分の日を祝う習慣があったとか。
国により風習や過ごし方は様々ですが、全ての命の源である太陽への感謝と多くの農産物が収穫できたことを大地に感謝する日です。

今回の主役はリンゴ。リンゴに隠された五芒星の話、祭壇の作りかたや、林檎の守り神「イズン」のことも書きました。
もちろんシャグも🍎！チョイス・ダブルアップルにハーブティーの出涸らしと蜂蜜をミックスして一服。

記事はこちら▶【魔女と煙草】魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:10】Mabon＝秋分＝

10月✡ソーウィン【大サバト】（10/31～11/2）

ソーウィン(サムヘイン)は、もともとはケルト人が信仰していたドルイド教の秋の収穫祭です。正式には10/31〜11/2の3日間ですが、地域により多少違いはあるようで、11/1〜11/2に行うところも多いそうです。
ケルト暦では10/31が大晦日。邪悪な精霊などを追い払う1年の終わりの行事。

そう、ソーウィンは「ハロウィン」の原型。ケルトの祭りがイギリスで生き残り、やがてキリスト教に取り入れられてアメリカに渡り、万聖節（11月1日）の前夜祭として盛大に祝われるようになりました。
翌日、11/2には死者の霊がこの世に戻ってきます。メキシコでは大切な日「死者の日」（Dia de muertos）ですね。国の祝日の為、学校や職場もほとんどの人が休みになるそうですよ(羨ましい🥺)
メキシコ先住民たちの間でトウモロコシや豆など農作物の収穫期に合わせて8月に行われていましたが、スペイン侵略後のカトリックへの改宗により日程がかえられ、現在の11/2になりました。

儀式では羊の頭を供物にして火を拝み、アイルランドの伝統的なパン、ドライフルーツとラム酒が香る「バーンブラック」を焼いておまじないをかけました。

トリック・オア・トリート！とはぜんぜん違うけど笑、これが魔女のハロウィンの一例なんです。

ソーウィンをハロウィンとしてキリスト教の行事に取り入れ、キリストとは関係ない12/24キリスト生誕の日に制定し「クリスマス」になったユール…悲しい歴史といえるかもしれません。
でも考えてみれば、その後クリスマスもハロウィンも楽しい行事として日本やアジア諸国にも受け入れられてました。古来より親しまれてきた祭事をキリスト教は全て排除する事ができませんでした。そのおかげで、私達は完全な姿ではなくとも古代の行事の一端を伺い知ることができるのです。

シャグ・カクテルはバーンブラックの風味をイメージしたシャグ。贅沢に3種のシャグをブレンドしてラム酒で香りづけを。

記事はこちら▶【ハロウィンと魔女】魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:11】Samhainn

11月✡儀式ナシ／”魔女シャグ”の1年

最後に、11月。
この月はサバトはないけれど、ケルト暦のはじまり、そして「魔女が教える秘密のシャグ・カクテル」にとって特別な月。
2021年11月、第一回のシャグブレンド「スパイシー・ブランケット」では、私がはじめて喫ったシャグ「ゴールデン・バージニア」をベースに、魔女になる前の思い出を書きました。

記事はこちら▶魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:1】スパイシー・ブランケット

そして、1年がめぐった2022年の11月には、自分ひとりだけの大切なモノに宿る魔法『エンチャント』をテーマに、紅茶やコーヒーなどティータイムの魔法について書きました。

シャグ・カクテルはティータイムにピッタリなリコリス・フレーバーのシャグにほんの少しのマジョラムを加えて。
煙と香りを天への供物として上らせましょう。

記事はこちら▶★1周年★魔女が教える秘密のシャグ・カクテル【recipe:12】Enchant

これが魔女の暦＝WHEEL OF THE YEAR。
2023年は、皆さんにもっと身近な魔女の生活の一部を一緒に体験して頂けこうかな、と思っているところです。
今年もひとつながりの時間をつつがなく過ごし、美味しく煙草を喫える日々をお祈り申し上げます。